2010年4月から、研究所の所長として赴任しました。私は、東京大学大学院の保健社会学教室にいた時に、薬害スモンの被害者実態調査に参加したのがきっかけで、薬害問題の調査研究を中心に、研究・教育の道を歩んできました。以来、約40年近くになります。大学院修了後、東京医科歯科大学難治疾患研究所(臨床薬理学部門、情報医学研究部門)に約30年、東洋大学社会学部社会福祉学科に約10年在籍し、2010年3月に65歳定年となりました。専任の勤務先は新潟医療福祉大学大学院(特任教授)になったのですが、週1日程度行けばよいので、首都圏での研究拠点を探していたところ、所長のお話があったという次第です。
研究所の名前は、従来は「臨床薬学」でしたが、私がやってきたことは、上記のように、薬害問題という、「医薬品の社会的側面」に関する問題の調査研究だったので、「社会」という名称を入れていただくことを提案し、ご承認をいただきました。私は、1979年に、板谷幸一、故・上田亨、故・高野哲夫の3先生と共に、「社会薬学」を提唱し、「社会薬学研究会」(現・日本社会薬学会)を立ち上げた者の一人なので、大変嬉しく思っています。
ご承知のように、薬害問題では、訴訟の被告となった国・製薬会社は、サリドマイド、スモン、薬害エイズ、薬害ヤコブ病、そして薬害C型肝炎と、5回も被害者たちに「お詫び」と「2度と繰り返さないように最大の努力をする」約束を繰り返してきています。そして、集団予防接種によるB型肝炎被害(薬害B型肝炎事件)、タミフル薬害事件、イレッサ薬害事件では、今なお責任を認めていません。そうした課題に、研究・教育の立場から、取り組んでいきたいと思っています。
以上は現段階で私が考えている研究課題ですが、そのほかにも、「臨床・社会薬学」をめぐる研究課題は数多くあります。そうした現場の課題に、主に薬剤師の方々と共に、ご一緒に取り組んでいきたいと願っております。私は、現場の経験が浅いので、いろいろ教えていただくことが多いと思いますが、どうぞよろしくお願いします。 |